司法書士法人・行政書士事務所ふらっと
LATEST INFORMATION & NEWS
最新情報/ニュース

最新情報のご案内

<コラム>会社設立時の定款『事業目的』の決め方

会社を設立する際には、定款(ていかん)という会社の基本ルールを定めた書類を作成します。この定款に記載する「事業目的」は、会社が将来どのような事業を営むのか対外的に示す重要な項目です。金融機関から融資を受ける際や取引先との信用構築にも関わるため、事業内容が誰にでもわかるよう適切に記載する必要があります。会社設立時の定款における事業目的について、基本的な考え方から業種別の具体例、そして記載する際のポイントや注意点を確認してみましょう。

定款の事業目的とは?

事業目的とは、文字通り「会社が行う事業の内容」を指します。定款の絶対的記載事項(必ず定款に記載しなければならない項目)の一つであり、事業目的が欠けた定款は無効になります。会社は定款に記載した事業目的の範囲内でのみ活動できると法的に解釈されるため、定款には現在行っている事業や今後予定している事業内容を漏れなく記載することが重要です。逆に言えば、定款に書かれていない分野の事業を会社が行う場合、定款変更(目的の追加)が必要になるので注意が必要です。

事業目的は通常、定款の第○条に列挙する形式で記載されます。例えば次のようなイメージです。

(目的)第○条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。  

1. 飲食店の経営  

2. 食品の製造および販売  

3. 不動産の売買、賃貸、管理及びそれらの仲介  

4. 前各号に付帯関連する一切の事業

この例のように、会社の主要事業や関連事業を番号付きで列挙し、最後に「前各号に付帯関連する一切の事業」という包括的な文言を加えるのが一般的です。具体的な書き方のポイントについては後述しますが、何より“事業目的は会社の「名刺代わり」”とも言えるものです。第三者が見てもその会社が何をする企業なのか一目で理解できるよう、分かりやすく簡潔に示すことが大切です。

事業目的を決める際に満たすべき3つの要件

事業目的を定款に記載するにあたっては、法律上おさえておくべき3つの必須要件があります。以下のポイントを満たしているか確認しながら内容を検討しましょう。

適法性(法律に違反していないこと)

定款の事業目的には違法なものを含めてはいけません。たとえば麻薬の販売や詐欺行為など、公序良俗に反する事業は当然記載できません。また、弁護士業や税理士業のように資格が必要な業種について、資格を持たない会社がその事業を目的に掲げることもできません。つまり、事業目的の内容はすべて現行の法律の範囲内で適法である必要があります。

営利性(営利事業であること)

株式会社や合同会社といった法人は、利益を上げて出資者に分配することを目的とした営利法人です。そのため、ボランティア活動や純粋な慈善事業など営利につながらない活動を主目的にすることはできません。例えば「地域の清掃活動」や「無料の相談会開催」だけを事業目的に掲げるのは認められません。ただし、営利目的の事業が主である限り、付随的に非営利的な活動を目的に含めることは可能です。いずれにせよ、事業目的には会社として収益を追求する内容を盛り込む必要があります。

明確性(誰が見ても分かりやすいこと)

定款の事業目的は、第三者が見ても何をする会社か明確に分かる表現でなければなりません。社内の人にしか分からない専門用語や略語は避け、一般的な言葉で記載します。例えば事業内容がIT関連であっても、「AIソリューションの提供」と書くよりは「ソフトウェアの開発・販売」のように、より平易で具体的な表現にすると分かりやすくなります。また、アルファベットの略語やカタカナ用語を使う場合は、日本語での説明を付記するか言い換えると親切です。明確性を意識した記載は、金融機関や取引先に対する印象も良くなり、信用獲得に繋がります。

許認可が必要な事業の目的には要注意

事業の中には、行政機関からの許認可(許可・認可・届出など)が無いと始められない業種が存在します。会社を設立した後にそうした許認可を申請する予定がある場合、定款の事業目的に所定の文言が入っていないと許可申請が通らないことがあります。したがって、対象業種では事前に必要な事業目的の記載を確認し、忘れず定款に盛り込んでおきましょう。

許認可が必要な業種と事業目的の例

許認可が必要な代表的業種と、定款に記載しておかなければならない事業目的の例をいくつか紹介します。該当する事業を計画している方は、下記のようなキーワードが定款に含まれているか確認してください。

  • 古物商(リサイクルショップなど):定款に「古物営業法に基づく古物商」という文言が必要。この記載がないと古物商許可(警察署への申請)が下りず、中古品等の売買業を合法に営めません。
  • 人材紹介業・派遣業:定款の目的に「有料職業紹介事業」や「労働者派遣事業」といった文言が必要です。これらがないと職業紹介業の許可や労働者派遣事業の届出が受理されません。
  • 旅行業:旅行代理店などを営む場合、「旅行業法に基づく旅行業」および「旅行業法に基づく旅行業者代理業」といった目的を入れておく必要があります。旅行業登録の申請時に定款をチェックされるため、適切な文言を漏れなく入れましょう。
  • 建設業:建設業の許可を将来的に取る可能性があるなら、定款目的に「建設業」等の記載があることが望ましいです。500万円以上の工事請負には許可が必要になるため、最初から目的に入れておくと安心です。

このほか、飲食店営業(飲食店の経営)、旅館業(ホテル・旅館の経営)、介護事業(介護保険法に基づくサービス事業)など、業種によって必要となる目的の文言は様々です。許認可が絡む分野で起業する場合は、事前に所轄官庁や専門家に確認し、定款記載すべきキーワードを把握しておきましょう。

事業目的の組み合わせにも注意

さらに、事業目的の組み合わせによっては許認可取得に支障をきたすケースもあります。例えば、前述の「有料職業紹介事業」(人材紹介業)の目的を定款に入れる際、同じ会社の目的欄に風俗営業に関する事業(ナイトビジネス等)が併記されているとします。この場合、管轄官庁の判断で職業紹介業の許可が下りないことがあります。一つひとつの目的は適法でも、組み合わせによっては審査でマイナスに見られることがあるのです。目的欄の組み合わせに十分注意しましょう。

業種別に見る事業目的の記載例

では、実際にどのような事業内容を事業目的として書けばよいのでしょうか。ここでは代表的な業種ごとの事業目的の例文をいくつかご紹介します。自社の予定事業に近いものがあれば参考にしてみてください。

飲食業の事業目的例

  • 飲食店・レストラン・喫茶店の経営
  • 弁当・惣菜等の調理食品製造および販売

飲食店ビジネスでは上記のように店舗運営や食品製造販売を目的に記載します。なお、飲食業でお酒の提供や販売を行う場合、営業許可や酒類販売免許も関わりますが、定款目的としては「飲食店の経営」等の一般的表現で差し支えありません。必要に応じて「酒類の販売」等を加える企業もあります。

IT・情報通信業の事業目的例

  • ソフトウェア・アプリケーションの開発、販売、保守
  • インターネットを利用した広告・マーケティング事業

IT関連企業では、ソフトウェアやウェブサービスの開発・提供をはじめ、ITコンサルティングやデジタル広告事業など広範なサービスを展開できます。上記のように具体的なキーワード(開発販売サービス提供など)を織り交ぜ、内容を明確にしましょう。ITエンジニアの派遣事業など人材関連を含む場合は、「労働者派遣事業」といった許可に関わる文言も忘れずに記載します。

不動産業・建設業の事業目的例

  • 不動産の売買、賃貸、管理およびそれらの仲介
  • 建築工事の請負、建築物の設計・施工・監理

不動産業では売買や賃貸の仲介・管理を目的に含めます。また、自社で物件を保有・運営する場合は「アパート、駐車場の経営」等も加えられます。建設業の場合は「建設業」そのものを目的とするほか、具体的な工事内容(例:土木建築工事、リフォーム工事など)や関連サービス(設計、測量等)を記載します。建設業許可を取得予定であれば、目的中に「建設業」が明記されていることが望ましいです。

人材サービス業(職業紹介・派遣)の事業目的例

  • 有料職業紹介事業
  • 労働者派遣事業
  • 求人・求職者のマッチングサービスの提供

人材紹介や派遣業を営む場合、上記のように法律用語に沿った目的の記載が必要です(有料職業紹介事業・労働者派遣事業)。これらは厚生労働省管轄の許可制業種なので、定款に明記していないと許可申請が受理されません。あわせて、人材育成や求職者支援のサービスなど関連事業も目的に加えておくと、事業内容の幅が広がります。

会社の事業目的は業種によって様々ですが、大切なのは「具体的かつ分かりやすい表現」でその事業内容を示すことです。また、一つの会社で複数の事業を行う場合、それぞれを箇条書きで列挙すれば問題ありません

事業目的の作成ポイント・コツ

事業目的を考える段階で押さえておきたいポイントをまとめます。これから定款を作成する方は、以下のコツを踏まえて目的欄を作成すると良いでしょう。

将来の事業目的も見据えて記載する

定款の事業目的には、将来的に行う可能性のある事業も含めておくことができます

会社設立時点でまだ手掛けていない事業でも、将来やりたい事業が明確にあるなら最初から事業目的に入れておくことをおすすめします。後から事業目的を追加・変更するには株主総会の特別決議や法務局での変更登記など手間と費用がかかるため、最初に広めに設定しておいた方が合理的だからです。

ただし、やみくもに何でもかんでも盛り込めば良いというわけではありません。現実味のない事業まで不必要に羅列すると、かえって会社の信頼性を損ねる恐れもあります。銀行や取引先から「実態のない目的ばかり並べている」と見なされる可能性があるためです。将来の計画を踏まえつつも、おおむね今後5年以内に開始できそうな事業を中心に選び、バランスよく記載しましょう。

「前各号に付帯関連する一切の事業」を最後に入れる

事業目的を列挙した最後には、ほとんどの会社が「前各号に附帯または関連する一切の事業」という包括目的を加えています。この一文を入れておくことで、定款に明記していない周辺分野の事業であっても、各号に関連性さえあれば営むことが可能となります。万一、事業目的の記載漏れがあった場合の保険にもなりますので、定款作成時には忘れず加えておきましょう。ただし、この包括目的に頼りすぎて本来記載すべき事業を省略してはいけません。あくまで補完的な役割と認識し、主要な事業は個別に明記するのが鉄則です。

定款の事業目的を変更・追加するには

会社設立後に新しい事業を始めたり、逆に事業の方向性を転換したりする場合、定款の事業目的を変更(追加・削除)する必要が出てきます。

定款の事業目的にない事業を行ったらどうなる?

結論から言えば、定款に記載されていない事業を会社が行っても直ちに違法とはならず、刑事罰や行政罰が科されることはありません。会社法上、目的外の事業を行ったこと自体に罰則規定はないためです。ただし、定款上の目的と実際の事業内容に大きなズレがある状態は望ましくありません。取引先や金融機関は登記簿記載の事業目的を見て信用判断をしますので、実態と乖離していると「説明が不十分な会社だ」という印象を与えかねません。結果として取引や融資を断られるリスクもあります。そのため、新たな分野の事業に乗り出す際は、できるだけ早めに定款の目的を見直すことが望ましいでしょう。

事業目的の変更手続きと費用

定款の事業目的を追加・変更するには、所定の手続きを踏まなければなりません。まず株主総会で目的変更のための特別決議を行い、株主の同意を得ます。その決議内容をもとに、法務局で変更登記の申請を行います。この際、変更後のすべての事業目的を記載した登記用紙を提出し、登録免許税として3万円を納める必要があります。手続き自体は専門家に依頼しなくても可能ですが、書類の不備や漏れがあると受理されませんので慎重に行いましょう。特に株式会社の場合は公証人による定款認証が必要(設立時)ですが、目的変更時には不要です。ただし合同会社であっても変更登記は必要なので、どの形態の法人でも定款変更は同様の流れになります。

定款変更は計画的に!

事業目的の追加・変更には以上のような手間と費用がかかるため、頻繁に行うのは避けたいところです。設立当初に将来の展望を考慮して目的を広めに設定しておけば、早々に定款変更する必要もなくなります。もし事業目的の書き方に迷ったり網羅できているか不安な場合は、はじめから専門家に相談してみるのも一案です。後で変更を重ねるより、最初に万全の定款を作成する方が結果的にコストも抑えられます

会社設立は司法書士法人ふらっとにお任せください

定款の事業目的は会社設立手続きの中でも特に重要なポイントです。適法性・営利性・明確性の3要件を満たした上で、将来を見据えた目的設定を心がける必要があります。許認可業種の方は必要文言を忘れずに盛り込み、過不足なく事業内容を伝えることが大切です。

「とはいえ、自分で事業目的を考えるのは不安…」という方もいらっしゃるでしょう。そんな時こそ、私たち司法書士法人ふらっとがお力になります。

ふらっとは千葉県成田市・四街道市・柏市に3拠点を構え、創業20年で培った信頼と実績を持つ法人です。多数の司法書士が在籍しており、会社設立をはじめ、他士業事務所や他業種とも連携してサポートできる対応力が強みです。定款の作成についても、これまで多くの会社設立に関するご相談に携わってきた経験から的確なアドバイスが可能です。

また、スピーディーな対応にも自信があります。電子定款の活用による迅速な手続きや、柔軟なスケジュール調整で、忙しい起業予定者の方を全力でサポートいたします。

会社設立登記に関しては、メールや電話でのやり取りでお見積も可能です。対面やオンラインでの面談も無料で承っておりますので、どうぞお気軽にご相談ください!専門家のサポートを活用して、安心・確実に会社設立の第一歩を踏み出しましょう。

お問い合わせフォームはこちらから!

LINEで相談ならこちらから!